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麻疹について

3/12に東京都から5歳未満の男児が麻疹を発症したと発表がありました。

麻疹の潜伏期間(ウイルス曝露から症状発現)は通常10日前後であり、発熱、カタル症状、結膜充血が数日間持続した後、頬粘膜における特徴的なコプリック斑が現れます(カタル期)。その1-2日後から一旦1℃ほど体温が下降した状態が半日ほど認めた後に再度40℃前後の発熱を認め(二峰性発熱)、それとともに顔面に発疹が出現し始め、その後全身性の特徴的な発疹が出現し、高熱が数日間持続します(発疹期)。重症化しなければ症状発現7~10日後に回復していきます。ヒトの体内に入った麻疹ウイルスは一過性(約1ヶ月間)に強い免疫機能抑制状態を起こすため、麻疹ウイルスそのものによるものだけでなく、合併した別の細菌やウイルス等による感染症が重症化する可能性もあり注意を要します。

また、麻疹に対する免疫は持っているけれども不十分な人が麻疹ウイルスに感染した場合、軽症で非典型的な麻疹(潜伏期が延長する、高熱が出ない、発熱期間が短い、コプリック斑が出現しない、発疹が手足だけで全身には出ない、発疹は急速に出現するけれども融合しないなど)を発症することがあり、修飾麻疹と呼ばれ、診断に難渋する場合があります。

日本では以前は流行を認めておりましたが、2006年度から1歳児と小学校入学前1年間の小児の2回接種制度が始まり、2008年度から2012年度の5年間に限り中学1年生と高校3年生相当年齢の人に2回目のワクチンが定期接種として導入されて以降は感染者は激減し、2015年にはWHOの西太平洋地域事務局から排除状態と認定されており、近年は海外渡航歴のある患者とその患者からの感染例を認めるのみとなっております。一部報道によると上述の男児も東南アジアへの渡航歴があったようです。

下に国立感染症研究所(NIIDHPの月別麻疹ウイルス報告数のページへのリンクを示します。

月別麻疹ウイルス報告数

これを見ると、時々麻疹患者数の増加を認めるものの流行が大きく拡大することなく収束していることがわかります。特に2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行以降は海外との人の往来が激減したことを反映してか麻疹感染症自体もほとんど認めておりません。

しかしながら2023年にアフターコロナの時代に突入し、以前の生活様式にかなり戻ってくるのに合わせて、麻疹感染症も少しずつではありますが再度認めるようになってきております。ひと足さきにアフターコロナに突入した海外でも同様に2022年から麻疹感染が増加してきています。

https://www.who.int/teams/immunization-vaccines-and-biologicals/immunization-analysis-and-insights/surveillance/monitoring/provisional-monthly-measles-and-rubella-data Global Measles and Rubella Monthly Updateより引用

上の世界地図は青色が濃いほど感染者数が多いことを示します。ロシア、西アジア、南アジア、東南アジア、アフリカで流行を認め、ヨーロッパやオーストラリアなどにも感染が拡大しつつあることがわかります。

オーストラリアは日本と同様に麻疹が「排除されている国」であり、過去には 2016年にモンゴル、 2021年にカンボジアが,輸入麻疹ウイルスの持続的伝播により排除認定が取り消されたこともあることから、今後日本でも海外渡航者を中心に麻疹患者が増加していくことが危惧されます。

海外から帰国後2週間程度は健康状態(特に、高い熱や全身の発しん、咳、鼻水、目の充血などの症状)に注意しましょう。 

帰国後2週間以内にこれらの症状を認める場合、帰国後2週間以内にこれらの症状を認めた方との接触歴がある方で同様の症状を認めた場合は、受診前に必ず電話でお問い合わせください。麻疹は空気感染する非常に感染力の強い感染症であり、麻疹が疑われる場合は当院の場合駐車場横の仮設診察室での対応となります。ご協力のほどよろしくお願いいたします。

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